弁護士 芦田栄子の日常記録 第5回 弁護士から見る浮気と不倫

突然の来所

皆さん、こんにちは。とある街の大きな法律事務所に勤める弁護士3年目の芦田栄子です。今日は平日で依頼人の方も少なく、比較的のんびりとした時間が流れる事務所内です。パラリーガルの子たちと抱えている案件について少しミーティングでもしましょう…

―ピーンポーン―

「あれ?こんな時間に、来客の予定はないはずだけど…」不自然なチャイムに、事務員の方が不思議そうに事務所の玄関に向かいます。

「はい?どちら様で…」

「ここ、弁護士事務所ですよね!あなた!弁護士さんですか?」

迫力美人…とでもいいましょうか。黒髪の長い髪をなびかせ、力強い目つきで事務員の方を見つめる女性が立っています。

「い、いえ…僕は、事務員で…あ!芦田さん!!あの!女性の方が弁護士です!」

そういうと、女性はズカズカと事務所に上がり込み、私のデスクまでやってきます。

「何か、ご相談でしょうか?」

あくまで冷静に対処するべきだと、直感が働きます。

「浮気って、犯罪じゃないんですか!?」

ああ、なるほど…。これは、少なくはない人数の方が疑問に思う内容ではないでしょうか。今日は、弁護士から見る浮気と不倫、また、実際にされた場合の対処法についてお伝えします。

「そうですね…ここではなんですから、あちらのお部屋で伺います」

 

不倫では刑罰にはならない

 迫力美人のお名前は、松井さん。5年間同棲している彼氏が浮気をしていることに感づき、警察に電話したところ浮気は犯罪にならないと言われ、悔しさのあまり家から一番近いこの弁護士事務所に駆け込んだそうです。

 「松井さんが仰る通り、浮気は犯罪ではありません」

 まずは、浮気や不倫とはどういった位置づけなのかについてお伝えしていきましょう。

 

⑴浮気や不倫は適法なのか?

 「浮気は犯罪ではない」この事実は、知っている方の方が多いでしょう。では、何故、犯罪にはならないのか、考えたことはありますか。実は、明治時代では姦通罪という犯罪に該当していたのです。しかし、現在の日本の法律では、人の心を害する行為は犯罪行為ではないとされています。つまり、人の心を害する行為に対しては、その行為があっただけでは犯罪として国が罰則を与えることが適切ではないと考えられているのです。

  では、浮気や不倫は法律に許された合法なものなのか?というと、そんなことはありません。不倫は「違法」行為です。実は、民法にその根拠があるのです。法律上、不倫は「不貞行為」という言葉で定義されます。この「不貞行為」は、「配偶者のある人が、配偶者以外の異性と、自由意思で肉体関係をもつこと」を言います。

  夫婦、というのは、一般的に配偶者以外とは肉体関係を持たない義務(貞操義務といいます。)を持つとされています。不貞行為を行った場合は、この義務に違反することになります。そして、この義務に違反すると「夫婦関係を破綻させた」ことに対し、責任を負うのです。ここでいう責任とは、慰謝料、というものです。

 

⑵結婚はしてないけど…浮気されても何もできないの?

 結婚されていない場合、夫婦ではありません。ですので、貞操義務もないことになります。その結果、浮気されても法的には全く何もできないことになります。ただ、今回の松井さんのように、長い間同棲をされている場合には、話が変わります。結婚する意志で夫婦同然の生活をしているカップル(内縁関係といいます)の場合は、結婚に準じる関係があるとして貞操義務が認められ、不貞行為があった場合は慰謝料請求が可能です。

 

どこからが不倫?

 「この写真を見てください!」松井さんはスマホを取り出し、彼氏と思われる男性と親し気に食事をしている女性の写っている写真を指差しました。

 「これ、浮気ですよね!この日は、会社で残業してて遅くなるって言ってたんです!嘘ついて食事なんて、やましいことがあるに決まってる!」

 私は写真を見つめ、楽しそうに笑う二人の表情をよく見た。

 「そうですね…松井さんのお話を聴く限りでは、私としても浮気ではないかと思います。ただ、慰謝料を請求することを考えるのであれば…」

 これ以上の関係性を証明しなければなりません。「どこからが不倫?」というのは、永遠のテーマで、人それぞれ異なりますが、法律の要求する不倫のハードルはある意味では高いといえます。では、法律上ではどこからが不倫なのでしょうか。

 

⑴前提

 不貞行為の定義をもう一度確認してみましょう。「不貞行為」は、「配偶者のある人が、配偶者以外の異性と、自由意思で肉体関係をもつこと」を言います。つまり、まずは「肉体関係」がなければいけません。

 

⑵デート、プラトニックラブ

 食事や遊びに行くだけというデートや心の中だけで想う恋愛は、肉体関係には程遠く、不貞行為とはいえません。ですので、例えば、熱いメッセージを送りあっていても、食事の現場を抑えても、私とは別の子が好きなのだという気持ちに感づいても、それだけでは、法律違反ではないのです。

 

⑶風俗店、援助交際

 肉体関係、という面で切りとれば、この二つは法律違反では?と思うのではないでしょうか。結論としては、その通りです。お店に通ったり交際関係が発展し、肉体関係に至った場合は立派な法律違反行為となります。ただし、例えば、身体を触る・キスをするという行為だけではまだ足りません。少しややこしいですが、注意が必要です。

 

⑷不貞行為があったら?

 では、不貞行為があった、という証拠がある場合はすぐに慰謝料が請求できるでしょうか。実は、他にもクリアしなければならない条件がいくつかあります。

  ①結婚している(又は内縁関係にある)こと

   これによって、貞操義務が認められるため、クリアしている必要があります。

  ②二人の関係性が破綻していないこと

   夫婦生活が長くなると、離婚はしていないけど別居状態のような、夫婦関係が既に破綻している場合に、愛を求めて不倫に走る、ということがあり得ます。このような場合は、夫婦関係は不倫によって破綻したのではなく、その前から既に破綻していることになるので、慰謝料をもらうことはできません。

  ③相手が既婚者であることを知っていた(又は不注意で知らなかった)こと

   今回の例でいえば、松井さんの彼氏のお相手に慰謝料を請求したいのであれば、お相手が、彼氏には松井さんという恋人がいると知っていたことが必要です。また、知らない場合でも相手の不注意、例えば、付き合う前に確認しなかった等があれば、請求できます。

  ④自由な意思で肉体関係を持ったこと

   これが不貞行為です。

  この4つの条件を全てクリアして初めて、慰謝料が請求できます。

 

不倫されたときの賢い対応方法

 少し話すうちに、松井さんも落ち着いてきたようです。

「じゃあ、私の場合だったら、あいつがセックスしてる証拠を掴めば、慰謝料がもらえるってわけか…」

せいせいする…という顔をしながら言うならまだしも、松井さんの表情は、今にも泣きだしそうな複雑な顔つきです。

「松井さんは、この彼氏さんと別れたいんですか?」

つい、そんな言葉が口をついて出てきます。本当にイライラして愛想も尽きて別れたいのなら、こんな表情はしないから。浮気をされてむかつく!もう別れる!という方もいれば、それでも彼のことが好きで、何故、私なのか、自分に魅力がなかったのか、と自分を追い込む人もいます。

「松井さん、申し訳ないのですが、一件電話をかけたいんです。少し席を外しても?」

静かにうなずく松井さんを見て、私は一度部屋を出ました。

浮気や不倫をされたとき、どうやって対処すればいいのかは悩むところですが、自分の感情や身体、心のケアを一番大切にして、自分が傷つかないようにどうすればいいかを考えることが大切です。そのうえで、以下の方法を参考にしてみてください。

「あ、お世話になっております。芦田です。」

 

⑴直接腹を割って話す

一つ目は、直接相手と話すことです。これは、ザ・正攻法です。まだ相手を好きな気持ちがあり、相手に改善する意思があるのであれば、試して損はないでしょう。ただ、自分の持っている情報を相手に突きつけるという点でリスクはあります。また、相手が開き直るようなことがあれば、精神的にもダメージを受けるかもしれません。ですが、相手を信じたいというのであれば、自分の心を整理するためにも、まず一番に試すべきです。

  相手がどんな気持ちで浮気・不倫をしてしまったのか、その経緯、相手との交際を続けるつもりなのか、をまずは確認しましょう。そのうえで、自分や両親、職場、周囲の知人・友人に知られても良かったのか、バレたら責任を取るつもりだったのか、を追及しましょう。そして、今、これから先どうしていきたいと考えているのか、二人の関係についてを話し合います。

  この話合い中は、両者とも感情的になることでしょうから、何かを決定するのはもう少し後にしてください。とにかく、吐き出す時間を作ることです。そして、全て録音してください。

 

⑵証拠をとる

 二つ目は、慰謝料前提の話です。もう相手に未練はない。別れたい。そうスッパリ想えるのであれば、次は浮気・不倫の証拠を探ることに発想を転換させましょう。また、不倫相手側の情報を得ることも大切です。この方法をとる時は、恋人と不倫相手のどちらにも勘付かれないようにしなければなりません。お金を使ってもいいという場合は、探偵や興信所に調査をお願いするのも一つでしょう。

  この方法をとるのであれば、関係修復は考えず、冷静に、確実に、相手に責任を負わせることだけを考えて自分を保護してください。

 

涙と探偵

 部屋に戻ると、涙目の松井さんがこちらに顔を向けました。

 「芦田先生、私、彼が好きでした」

 涙の奥の瞳は、もう複雑な感情を携えてはいません。強く、一点を見つめています。

 「好きだったのは、過去なんですね?」

「はい。5年も一緒にいたから、いなくなるのが考えられませんでした。でも、私のその長い間築いてきたつもりだった信頼を裏切られたのか、と思ったら、なんか、どうでもよくなりました。慰謝料もらってスッパリ別れます。」

 背筋を伸ばし、吹っ切れたように話す松井さん。

 「そうですか。でしたら、電話した甲斐がありました」

 ―コンコンコン― 

 誰かノックされるドアを見て、不思議そうな顔をする松井さんに、私は優しく答えた。

「証拠集めをする際、どんな点に気を付けたらいいか、その道のプロにもアドバイスをしてもらえないかと思って」

ドアを開けると、浮気調査を得意とする探偵が現れた。松井さんは、少し驚いた表情を浮かべた後、微笑んだ。

 「よろしくお願いします!」

 ・・・

最後までお読みいただき、ありがとうございます。今日は、弁護士からみる浮気と不倫、そして、実際に不倫をされた場合の対処方法をお伝えしました。

誰かの心を傷つけて自分の欲求を満たすことは、故意にするべきではありませんね。不倫やいじめ、ハラスメント行為には、その片鱗を垣間見ずにいられません。

私たちも、普段の生活から気を付けたいですね。それでは、また次回、お会いしましょう。

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