弁護士 芦田栄子の日常記録 第7回 差別?区別?

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バー『HIROMI』

 -カランカランッー

 皆さんこんにちは。とある街の大きな法律事務所に勤める弁護士3年目の芦田栄子です。今日はお仕事終わりに家の近くにあるバーにやってきました。

 「あら~!栄子ちゃん!!ちょっとおひさしぶりじゃな~い!」

 高めの大きな声で声をかけてくださるのは、このバーの店主、ヒロミさんです。

 「こんばんは、ヒロミさん。なかなか顔を出せず、申し訳ございません。」

 「いいのよ~!和みたいときに来てくれたら!嬉しいわあ♪何飲む~?」

 元気なヒロミさんを見ていると、少し落ち込んだ時は元気をもらえます。

 「では、ジンバックをお願いします。」

 そういうと、ヒロミさんは微笑んで、ジンバックを作ります。

 「栄子ちゃん、何かあったのね?い・や・な・こ・と?」

 ヒロミさんは人の感情の変化に敏感で、お世話好きな性格。何かある時、つい私はこの方を頼ってしまうのです。

 「ええ、実は今日、久々に軽蔑するような目で見られてしまって。初めてお会いした男性の方に『女性の弁護士なんか信用ならない。男性を出せ!』と怒鳴られてしまいました。」

 「はあ?何そのオトコ~!栄子ちゃんが自分より賢いから妬んでるんだわ!気にしちゃだめよ~!」

 ヒロミさんの言う通り、気にしてはいけないのでしょう。普段ならそこまで刺さらないでしょう。でも、疲れていたり、うまくいかないことが続いた時に、不意に言われると落ち込んでしまいますよね。

 今日は、日本にはびこる差別問題について、お話します。

 

日本にはびこる差別とは?

 日本は、他の国と比べて何かにつけて差別をすることが多いことはご存じでしょうか。日本が島国であり、閉鎖的な空間であること、つい最近まで『男は仕事、女は家を守る』という慣習が抜けなかったこともあるでしょう。差別にも様々な種類があります。

 

⑴女性差別

 今日私がされた差別はれっきとした女性差別です。男と同じように働くなんて生意気な女だ、というところでしょう。近頃のニュースでは、ある漫画家さんが女性であったことが知れた瞬間、批判的な内容のコメントが相次いだという話題もありましたね。女性の多い職場では感じられにくいですが、もともと男社会の仕事、政治家、警察、自衛隊等の公職をはじめ、弁護士等の士業、医師、営業職…上げだすとキリがありませんが、そういった場では、まだまだ女性の就職率が低いというのが実情です。その中、女性だから、という理由だけで不当な扱いを受けることは少なくありません。

 

⑵性的マイノリティ差別

 性的マイノリティという言葉をご存じでしょうか。最近はLGBTともいわれ、レズ・ゲイ・バイ・トランスジェンダーの略だそうです。ヒロミさんは、実はゲイ…ご自身では『オネエなの♪』とおっしゃっていますが、MtF(Male to Female)というジェンダーのおひとりといえます。日本ではよくオカマと表現され、テレビや漫画では少しコメディ調に扱われがちですよね。実際は、好きな恰好をしているだけで『気持ち悪い』と騒がれたり、学生時代は自分の内心と外面とのギャップに悩まされる方も多いそうです。

 

⑶人種差別

 次に、人種差別です。先月からアメリカで黒人男性が白人警官に殺された事件が発端で、現在では日本でも集団デモによる抗議活動がされていましたね。人種差別は白人から他の人種に対してなされるイメージがあります。日本人も古くは『サル』と表現されていた歴史があります。しかし、私たちは被害者であるだけとはいえません。国内で外国人を見たとき、例えば、中国人や韓国人に対しては悪いイメージを持つ方が多いのは事実です。

 

⑶患者差別

 ある病気に罹患した方に対する差別は、時代を問わずに存在します。特にコロナのような感染症に対しては、『自分がかかりたくない』という自己防衛心からか、患者さんや罹患可能性のある方に、必要以上の要求をすることがあります。今回のコロナの一件では、それに止まらず、医療従事者の方に対しても差別がされましたね。

 

あなたは差別をしていない?

 「私もよく気持ち悪がられるんだけどねえ?ああいう無神経な人たちって、自分が差別してるってこと気づかないのかしらね!」

 ヒロミさんがそう言ってプリプリしています。

 「…そうですね。気づきにくい、というのが現状かもしれません。私も気づいていないだけで、差別してしまっているのかもしれませんし。」

 差別というのは、される側はすぐに気づきますが、する側は案外気づいていないものです。気づかないのには、差別と近い言葉に区別、というものが存在するからです。

 

⑴差別と区別は違うもの

差別と区別とは、何が違うのでしょうか。実は、差別は憲法違反になります。憲法14条1項は『すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。』という規定です。つまり、先ほどお伝えしたような性的な差別、人種差別、患者差別は許しません!というわけです。これは、憲法13条が掲げるすべての人が個人として尊重されることと関連し、お互いに平等であることに通じます。

ただし、この条文に従うのには、難しい問題があります。そもそも、生き方や考え方は十人十色です。異なる者同士の間での平等を考えると、どんな人にも同じように、というわけにはいかないのです。そのため、合理的な区別は許容されます。

 

⑵差別と区別の例

さて、では、合理的な区別とは…?差別とはどう違うのかを見てみましょう。

  まず、差別とされた例には、刑法に尊属殺人に関する特例があったことです。これは、ある人が殺人をした際に、その殺人の相手が他人なのか自分の親なのかで刑罰の重さが変わるというものでした。昔は、尊属という家系図で自分より上の親族を敬うという慣習があり、このような法律があったのです。ですが、考えてみれば、他人にしろ親にしろ、一人の人です。その命の重さに違いはないわけで、この法律は合理的な理由がないものだとされました。

  一方、区別の例としては、様々な施設で身体障がい者の方用に駐車場のスペースが設けられていることです。これは一般的に、健全な方と身体障がい者の方では体力や移動の態様が異なります。この場合は、皆平等であるべきだ!といって身体障がい者の方と健全な方と全く同じように扱うと、身体障がい者の方にとって負担となってしまいます。

  このように、差別と区別の違いは、その分け方に合理的な理由があるか否か、なのです。

 

⑶いつのまにか差別している?認識できないのは何故?

 私たちが気づかないうちに差別をしてしまっているのは何故なのでしょうか。それは、自分の性格の他に、誤った情報の共有によるものがあげられます。近年は、情報収集をしようと思えば、マスメディアからの情報だけでなく、SNSやブログ記事などで個人の方が記述した情報を得ることもできますよね。様々な情報が飛び交う中で、間違った情報を知って自分の意見をもつと、不当な差別につながってしまうこともあるのです。情報の精査が大切だとよく言われますが、惑わされないように気を付けたいものですね。

 

差別にあったかも?対処法は?

 バーに来てから結構時間が経った頃、お客さんは私以外にいないからか、ヒロミさんも少しお酒を飲みながら、話を続けます。

 「でもね、栄子ちゃん!差別されたからって、縮こまっちゃあダメよ!余計に相手が調子に乗るんだから!!」

 ヒロミさんは少し酔っているのか、差別された側はどうあるべきかを熱弁しています。確かに、差別をされる側は、おどおどしていたり、弱弱しいイメージがあるかもしれません。ですが、それでは現状を突破できない…それはその通りでしょう。どのように接すれば、差別されなくなるのでしょうか。

 

⑴毅然とした態度で

 まず、態度はとても大切です。何か差別的な発言や行為をされた場合、毅然とした態度で『やめてください』と対抗することが大切です。差別する人は、そもそも差別をしていることに気づかない人がほとんどでしょう。『やめて』と言われて初めて、自分の過ちに気づくこともあるのです。また、故意に、嫌がらせる目的で差別をする人は、される側がおとなしくしていたり、従うと、ヒロミさんがおっしゃったように、調子に乗ってしまいます。自分にとって目上の人だとしても、その人の発言や行為が許されるわけではありません。『自分には効きません。むしろ、あなたの立場が危ういのでは?』という気持ちで毅然と立ち向かいましょう。こちらを悪く扱おうとするような場合は、普段の会話を録音しておくのも手です。

 

⑵信頼できる人に頼ろう

 次に、差別と一人で戦うのはとても厳しく辛いです。自分にとって信頼できる人に相談しておくことが、自分の心を冷静に平常に保つことにつながります。くれぐれも、一人で思い悩んで心の病にかからないように気を付けましょう。信頼できる人が近くにいない場合には、弁護士や相談センター等の専門機関を頼るのも一つでしょう。

 

平等な世界になってほしい

 「あ、そろそろ閉店時間ですよね?私、帰ります。ヒロミさんとお話していると、気持ちが軽くなりました。ありがとうございます。」

 そういって帰り支度を始めると、ヒロミさんが寂しそうな顔をします。

 「ええ~もう帰っちゃうの~?でも、栄子ちゃんは忙しいから仕方ないわね…」

 「そんなに寂しがらなくても、また来ますよ。ヒロミさんは彼氏さんと楽しい時間をお過ごしください?」

 そういって、バーの窓から外に目をやると、少し離れたコンビニの横でバーの様子を窺っている男性が目に入る。

 「あら!栄子ちゃん、なんでわかるの!」

 「30分ほど前から、ずっとチラチラとバーを見ているので、そうかな?と思いました。」

 ヒロミさんが窓から彼に手を振ります。彼も気づいてにっこり笑っています。世の中にはいろんな人がいます。全く同じ人は一人もいなくて、それぞれがそれぞれの人生を歩んでいます。だからこそ、区別のつもりが差別にならないように、平等のつもりが不平等にならないように、私たちは他の人との距離を測りながら、時にはぶつかり合いながら、自分の認識を調整していくのでしょう。

今回は、差別と区別について、沿革や違いをお伝えしました。あなたが差別に直面したとき、思い出してみてくださいね。

 「それでは、また」

―カランカランッ―

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